
農学部 地域環境科学科 革新農業コース
折笠貴寛
農産食品プロセス工学
国立大学法人岩手大学では、農産食品を対象とした加工流通プロセスの高度化に関する研究を行っています。農学部折笠貴寛教授らの研究グループは、農産加工食品の製造において一般に適用されているブランチング処理に着目し、熱湯とマイクロ波を併用した手法を導入することで、栄養成分の低下や細胞壁構造の損傷などの品質劣化を抑制できることを明らかにしました。本研究成果は、Wiley社が出版する国際誌 Journal of Food Processing and Preservationに掲載されました。
我が国では、単身世帯や共働き世帯の増加により加工食品の需要が高まっており、高品質な食品を製造するための新たな加工プロセスの確立が重要な課題となっています。野菜類を対象とした食品を製造する際には、一般に「ブランチング」と呼ばれる処理が施されます。ブランチングとは、農産物を加工前に加熱することで内在酵素の働きを抑制し、加工中や加工後の製品における酵素由来の品質変化を防ぐことを目的とした前処理です。従来は熱湯や蒸気による処理が主に用いられてきましたが、これらの方法では水溶性成分や色素の損失、組織の軟化など、品質への影響が問題となっていました。本研究では、ニンジンをモデルサンプルとして、熱湯とマイクロ波を併用した手法をブランチングに適用することで、細胞壁構造の損傷抑制やビタミンC含量および色彩の保持など、品質への影響を軽減できることを国立研究開発法人 農業?食品産業技術総合研究機構(農研機構)との共同研究により学術的に明らかにしました。今後は、他の青果物に対してこの手法を適用して網羅的に品質評価を行うとともに、処理時間の短縮などの要因を考慮してプロセスを最適化することで、環境負荷の小さい持続可能な食品加工技術の確立が期待されます。
?ブランチング:農産物を加工前に加熱処理することで、内部に含まれる酵素の活性を低下させ、加工中および加工後に生じる酵素由来の品質変化の抑制を目的とした前処理です。熱湯や蒸気による処理が広く適用されています。
?マイクロ波:電磁波の一種で、水分を含むものを効率よく温める性質があります。電子レンジで食品が短時間で加熱できるのは、このマイクロ波が水分子を振動させて熱を生み出すためです。通信やレーダーなどにも利用され、日常生活から産業まで幅広い場面で活躍しています。
論文情報
【タイトル】Evaluation of the quality characteristics of carrots in combination with hot water and microwave blanching
【著者】Takahiro Orikasa, Yasumasa Ando, Natsuki Okoshi, Ryo Akahira, Kanoko Miura, Misaki Komuro, Kuniaki Sasaki, Shoji Koide
【掲載誌】Journal of Food Processing and Preservation
【URL】https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1155/jfpp/7691678
【DOI】10.1155/jfpp/7691678
【公開日】2025年12月6日
本研究は、JSPS科研費「基盤研究B(JP25K02124)」および「基盤研究C(JP22K05901)」により行われました。
本研究成果の詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。
プレスリリース